『メトロイドプライム2 ダークエコーズ』(METROID PRIME 2: ECHOES) は、2005年5月26日に発売されたゲームキューブ専用ソフト。『メトロイドシリーズ』第7作、『メトロイドプライムシリーズ』および『プライム三部作』の第2作にあたる。『メトロイドシリーズ』で初めて対戦モードが実装された作品でもある。
解説[]
- 『メトロイドプライム』の正統続編で、前作と同じく任天堂とレトロスタジオの共同開発作品。『メトロイドプライムシリーズ』特有のFPA (ファーストパーソンアドベンチャー) 方式のゲームシステムとなっており、主人公「サムス・アラン」の視点でゲームをプレイする。基本操作は前作と共通だが、ステータス画面のUI構成、スキャンバイザーの仕様が変更され使いやすくなっているなど、細かなブラッシュアップが施されている。アクション面に関しても改良点が多く、前作では技術的問題によりカットされたスクリューアタックの実装や、ライトビーム/ダークビームといった本作固有の武器アイテムが追加されるなど、様々な新しい試みが行われている。
- 本作のメインテーマは「光と闇」で、相反する「光」「闇」の表裏一体となるパラレルワールドを探索する。ゲームの舞台「惑星エーテル」は、ポータルと呼ばれるワープ装置を利用して「光」「闇」2つの並行世界を行き来する二層マップ構成となっており、これまでのシリーズ作品では味わえない独自の探索性が追求されている。敵クリーチャー・各種ギミックにも「ライト」「ダーク」2種類の属性が設けられ、逆属性の武器で攻撃すると大ダメージを与えられるなど、シンプルながらも戦略性の高いゲームシステムが構築されている。
- ストーリー面でも前作との差別化を図っており、ゲーム中に挿入されるムービーや、スキャンによって獲得できるログブックを通して、「光と闇」のテーマに沿った重厚かつシリアスなストーリーを楽しめる。ムービー中にはやや残酷な表現描写もあるため、シリーズで初めてCERO:B (12歳以上対象) レーティングが設定された。「プライム三部作」の中でも特にファンタジー要素が色濃く、ユニークな設定が盛り込まれている異色作となっている。サムスと同等の能力を備えた強敵「ダークサムス」や、これまで説明書等の設定上でしか言及されていなかった「銀河連邦軍」の兵士達、サムスに協力する友好種族「ルミナス」など、主人公以外のキャラクターが多数登場してストーリーに関与するのも特徴で、シリーズの世界観拡張に大きく貢献している。
- 本作は『メトロイドシリーズ』で初めて対戦モードが搭載されたゲーム作品でもある。複数コントローラーを接続することで、最大4人までのローカル同時対戦が可能。FPSライクの対戦シューティングアクションが楽しめる。マルチプレイ専用のアイテム・アクションも存在。後発の『メトロイドプライム ハンターズ』『フェデレーションフォース』等の作品に多大な影響を与えている。
開発[]
急ピッチの続編開発[]
- 本作の開発は2003年4月頃、前作『メトロイドプライム』発売直後に開始された[1]。『メトロイドプライム』で成功を収めたレトロスタジオの開発メンバーは、それ以前の評価とは打って変わり、高品質で価値ある続編を期待される、強烈なプレッシャーに晒されていた。だが、当時45名の社員を擁する小規模なゲーム会社で、任天堂の子会社となって間もない時期の同社にとって、『プライム』続編開発は大きなビジネスチャンスでもあった。本作のプロデューサーを務めたBryan Walkerは、様々な新要素を盛り込みつつ、第1作リリースから約2年という異例のスピードで発売に漕ぎ着けた本作の開発期間を "非常に積極的な時間" であったと振り返っている[2]。
- 急ピッチのグローバル開発はかなり厳しく、任天堂・レトロスタジオとの間で認識の乖離も見られた。本作のプロデューサーを務めた田邊賢輔は、一時的に『プライム2』開発現場から抜けていた時期があった。その後、締切3ヶ月前に開発状況を聞いたところ「30%くらいです」と返答され、真っ青になったという。レトロスタジオ側は開発は順調で、当初の設計通りプロジェクトが進行していると認識していたのだが、任天堂スタッフ側から見ると基準に満たないと判断されていたようである。本社からは「その年のクリスマス商戦に絶対に出すから、発売は延ばせない」と言われていたため、田邊はその時期からテキサス出張を繰り返し、開発現場に籠るようになったという[3]。
労働・開発環境の改善と挑戦[]
- Bryan Walkerは、全体的に高度な技術レベルを有し、それに見合う成果を出していたにも関わらず、第1作『メトロイドプライム』の過酷な開発スケジュールによって完全に疲弊してしまい、一種の "インポスター症候群" ともいえる状況に陥っていた開発チームのケア、および労働環境の改善に取り組んだ[4]。
- 本作の開発チームは非常に限られた期間の中で、様々なチャレンジを行った。スクリューアタックおよびキッククライムの導入は、その1つである。過去の『2Dメトロイドシリーズ』で馴染み深く、ファンからの導入要望が大きかったものの、前作『プライム』では技術的課題が多く採用を見送ったアクションだったが、続編でうまく形にすることに成功した。
- 本作のアーティスト陣は前作『プライム』のアセットを流用することはなく、コントロール・モーション等を除き、 ゲーム中で目で見て触れられる全ての3Dモデルをゼロから再作成した。エンジニアリングチームは強力な開発支援ツールを製作し、一流のコンテンツを比較的容易にかつ高速に生成することを可能にした[2]。
- また「光と闇」をテーマとした重厚なストーリー・世界観をプレイヤーに伝えるため、前作『プライム』以上にムービーシーンが多用されている。ムービー総量は前作の約3倍[1]で、任天堂の企画開発部が制作したコンテを基に、レトロスタジオ側で映像が制作された。プリレンダリングではなく、ゲーム内データを使ったリアルタイム描画が多く採用されている。カットシーン制作に注力していたシネマティクス担当者は、僅か1人だったという[2]。
「光と闇」というテーマについて[]
- 『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』のように、2つの並行世界を移動する「光と闇」という本作独自のコンセプトは、レトロスタジオ側から提案された[5]。シニアデザイナーを務めたMike Wikanの言によると、このコンセプトを発案したのはデザイナーのPaul Reedで、他のいくつかのアイディアと共に任天堂に打診をかけ、最終的に採用されたのが「光と闇」だったという[6]。本作のプロデューサーを務めた田邊賢輔は、過去に『神々のトライフォース』の開発に携わっており、約10年ぶりに同じテーマを別作品で扱えることへの期待があったと語っている[1]。
- 「光と闇」というコンセプト提案には、開発作業の効率化という目的もあった。エーテルの各エリアを構成する部屋のアセットを、並行世界のダークエーテルで複製・再利用することで、開発工数を大幅に削減しつつ、ゲームボリュームを担保できることが期待されていた。しかし、実際は当初の想定以上に作業量が多く、完全な複製は困難であったため、一部通路を障害物 (異形植物など) で塞ぎ移動範囲を制限したという[7]。テクニカルリードのJack Mathewsは、本来であればライトエーテルのマップ全てをダーク側に複製して、ライト/ダークの世界観描写・視覚的表現をより明確に区別したかったが、あまりにも作業量が多く、時間や予算が足りず断念したと語っている[8]。
紆余曲折を経て実装されたマルチプレイヤーモード[]
- 本作は当初、マルチプレイヤーモードに焦点を当てた『Metroid Prime 1.5』として開発が進められていたものの、後に従来の『メトロイドシリーズ』作品と同様のシングルプレイヤー中心のゲーム仕様に変更されたという開発経緯がある。マルチプレイヤーの実験には約6ヶ月、開発期間全体の約25%もの時間が費やされた[9]。構想段階ではプレイアブルキャラクターとしてスペースパイレーツを操作可能にする機能や、壁に掴まるアクション等も実装予定だったという[8]。
- テクニカルリードのJack Mathewsは、マルチプレイヤーの実装に多大な労力を費やした結果、本来拡充すべきシングルプレイヤーの品質向上に全く時間を充てられなくなってしまった点について反省しつつ、マルチプレイヤーの実装は不要だったと批判している[8]。一方、プロデューサーのBryan Walkerは、開発チームの規模的にシングル/マルチプレイヤーの両立が困難であることを重々理解しつつ、『マリオカート』等の対戦ゲームが多くの任天堂ファンに好まれている背景を意識して、実験的に取り組んだものだったと好意的な解釈を語っている[4]。
ストーリー[]
遠い昔、ルミナスという種族が、放浪の果てに惑星エーテルに定住した。しばらくは繁栄の時代が続いていたが、やがて惑星のエネルギーが枯渇しつつあることが判明する。この危機を乗り切るため、ルミナスはエネルギー制御装置を3つの大地に建造し、聖なる大聖堂とリンクさせた。かくして危機は去り、ルミナスはふたたび平和と繁栄を迎えたのである。
しかし、平和は長く続かなかった。惑星エーテルへ隕石が衝突したのである。爆発と隕石のエネルギーは次元のゆがみを生み、異なる次元にもう1つの惑星を作り出した。それは光のエーテル(ライトエーテル)に対して、闇のエーテル(ダークエーテル)とも言うべき相似形の世界であり、そこから凶悪で無慈悲な闇の種族「イング」が攻め入ってきたのだ。
イングはライトエーテルの生き物に憑依することで、光の世界で戦うことができた。一方のルミナスは瘴気渦巻く闇の世界にとどまり戦うことはできない。彼らはしだいに追いつめられていく。
2つの世界(ライトエーテルとダークエーテル)は同じ惑星のエネルギーを分け合う関係にあり、すべてのエネルギーをライトエーテルに集めればダークエーテルは消滅する。そのことに気付いたルミナスは、すべてのエネルギーをダークエーテルから奪う計画を立て、反撃に出る。しかし計画は失敗し、さらに開発した転送モジュールまでもイングに奪われてしまう。モジュールを手にしたイングによって、大聖堂以外のルミナス神殿からは惑星エネルギーが奪い去られ、いまやルミナスとライトエーテルの生命は風前の灯火となった。
そんな時、スペースパイレーツを追っていた銀河連邦ブラボー中隊が惑星エーテルで消息を絶つという事件が発生する。銀河連邦は捜索のため、サムス・アランを惑星エーテルに派遣する……。
--- Mission File 02546 ---
8 days ago, contact with Galactic Federation trooper squad Bravo was lost.ミッションファイル
ナンバー 02546---
銀河連邦ブラボー中隊からの送信が
途絶えてから8日が経過--- Contract Agreement ---
Locate Federation troopers and render assistance.コントラクト承諾---
ブラボー隊の消息を調査しこれを救援せよ--- Data Confirmation ---
Last transmission received from a rogue planet located in the Dasha region called Aether.データ確認---
最終送信地点は、ダーシャ星系所属
惑星エーテルと判明Uploading last known coordinates now_
座標アップロード中
ステージ[]
アイテム[]
- アームキャノン
- サブアイテム
- その他
エンディング[]
- 詳細記事:『ダークエコーズ』エンディング詳細
- 前作『メトロイドプライム』と同様に、本作にも複数のエンディングムービーが存在する。ムービーは全3種類のパターンが用意され、プレイヤーのアイテム回収率と対応している。ネタバレにつき詳細は該当記事を参照。
特典[]
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ネタバレ要素を確認: 以降の記述には、ゲーム・漫画などの核心部分について記述されている可能性があります。 |
ギャラリー[]
- 本作のコンセプトアートなどを閲覧できる特典要素。オリジナルのGC版では、スキャン達成率に応じてギャラリーが順次解放されていく。『Wiiであそぶ』版では、ゲーム中の特定条件を満たすことで収集できるパープルクレジットと引き換えにギャラリーを解放することが可能。→ ギャラリー
ナンバー 出現条件 01 スキャン率40%達成 02 スキャン率60%達成 03 スキャン率80%達成 04 スキャン率100%達成 05 ノーマルモードをクリア 06 ハードモードをクリア
サウンドテスト[]
- 『Wiiであそぶ』版での特典要素。ゲーム中のイベントを進めることで収集できるシルバークレジットを消費することで、劇中BGMの一部を獲得・試聴することが可能。
No. 曲名 クレジット数 01 Metroid Prime 2 (タイトル) 1 02 スプリンターハイブ 1 03 VS. 銀河連邦兵士ダーク 1 04 ルミナセウス 1 05 ルミナス 1 06 アーゴン 1 07 闇のアーゴン 1 08 VS. イング 1 09 VS. アモービス 1 10 水没した神殿 1 11 ホレイト 1 12 VS. クアドラアクシス 1 13 闇のルミナセウス 1 14 VS. エンペラーイング (アネモネ) 1 15 VS. エンペラーイング (スパイダー) 1 16 VS. ダークサムス 2 17 エンディングスタッフロール 2
マルチプレイ[]
- 詳細記事:マルチプレイ
- シリーズ初の対戦モード。対戦相手を倒した数を競う「デスマッチ」と、相手にダメージを与えた際に落ちるコインを収集する「コインモード」の2種類のゲームルールがある。プレイアブルキャラクターは主人公のサムス・アランのみ。
別バージョン・他機種版[]
Wiiであそぶ メトロイドプライム2 ダークエコーズ[]
Wiiであそぶ版パッケージ
- ロックオンフリーエイムやボールジャンプ等を含め、他多数の要素がWiiであそぶ メトロイドプライム同様に調整されている。
- 本作独自の調整は以下
- 敵クリーチャーの耐久力を下方修正
- ブーストガーディアン等の一部ボスを弱体化
"レボリューション" デモ版[]
- 後にWiiとなるゲームハード、通称 "レボリューション "用のデモソフト。2005年9月16日の東京ゲームショウで公開された。ゲーム内容はオリジナルと同一だが、操作方法が変更され、Wiiリモコン+ヌンチャクによる直観的操作が可能となっている。
- Wiiコントローラー試作品の開発過程を見ていた寺崎啓祐が「これで『メトロイドプライム』もつくれるだろうけど、コントローラは分かれていたほうが、遊びやすいんじゃないか」と発案したことが契機となり、ヌンチャクを開発。その試遊ソフトとしてデモ版『プライム2』が制作された。Wiiおよびヌンチャクは当時まだ未発表で社内最高機密とされていたため、レトロスタジオの極少数の人員にのみしか知らされず、秘密裏に制作が進められた[10]。
- 本作はWiiの操作を体験できるソフトとしての側面だけでなく、続編『メトロイドプライム3 コラプション』開発に向けた技術的検証を目的としたPoCとしての側面もあった。東京ゲームショウの直前、田邊賢輔はデモソフトをレトロスタジオ本社に持ち込み、実際にスタッフ全員に触って貰う事で、イメージを膨らませる為の一助としていた[10]。
Metroid Prime 2: Echoes Bonus Disc[]
-
オフィシャルデータ[]
書籍[]
>> 光と闇の属性を使い分ける
消息を絶った銀河連邦軍のブラボー中隊を追い、サムスは惑星エーテルへ。そこは光と闇の勢力が争う世界だった。光と闇のパラレルワールドを行き来するのが最大の特色。敵も2属性に分かれ、弱点に応じて攻撃を使い分ける。
●ダークサムスは、1作目で倒されたメトロイドプライムがサムスのマトリクスを取りこんでよみがえった姿。
●隕石の衝突により、光のライトエーテルと闇のダークエーテルの2つに分かれ、争いが起きてしまった。任天堂公式ガイドブック METROID Other M「主人公サムスの戦いの足跡」(p.173)
ギャラリー[]
外部リンク[]
脚注[]
- ↑ 1.0 1.1 1.2 任天堂マガジン6月号 No.83『メトロイドプライム2 ダークエコーズ』開発スタッフインタビュー
- ↑ 2.0 2.1 2.2 News: Post game report: Retro Studios talk Metroid Prime 2 Echoes - ComputerAndVideoGames.com
- ↑ 社長が訊く『メトロイドプライム3 コラプション』- 2. 西洋のよさと、東洋のよさを
- ↑ 4.0 4.1 Interview: Bryan Walker | Shinesparkers
- ↑ 社長が訊く『メトロイドプライム3 コラプション』- 3. 評価が低かったWii
- ↑ ちなみにMike Wikanによると、他の候補としては「タイムトラベル」や、新しい記憶を数分以上保つことができない「前向性健忘症」を活用したゲームプレイ案があった。後者は2000年公開のアメリカ映画『メメント』から着想を得たという。
- ↑ #114 - Kynan Pearson Interview (Metroid Prime 2, Donkey Kong, Level Design, Management etc.) - YouTube
- ↑ 8.0 8.1 8.2 Interview: Jack Mathews | Shinesparkers
- ↑ #105 - Mike Wikan Interview (Metroid Prime Trilogy, Game Design, Crunch, Booz Allen Hamilton etc.) - YouTube
- ↑ 10.0 10.1 社長が訊く『メトロイドプライム3 コラプション』3. 評価が低かったWii
関連項目[]
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